経営システムに貢献する情報システムを開発するためには、システム開発者だけでなく、情報システムの利用者や発注者もシステムライフサイクルと開発プロセスの概要の理解が求められている。本書は、SDEV社という仮想的な企業のパソコン製品の販売業務の改善を例題にして、Web技術を用いた販売管理システム開発の要求分析、システム設計、プログラム作成、テスト、および運営に至る開発ライフサイクルを演習を通じて擬似的に体験し、初学者がシステムライフサイクルの基本事項を実務的な側面から学べるように構成されている。 本書では、早稲田大学創造理工学部経営システム工学科の授業で実際に利用されているサンプルプログラムを利用した演習をこなすことで、開発プロセスの疑似体験ができる。演習は、経営環境分析から始め、業務分析や要求分析に関しては、ソフトシステム方法論におけるCATWOE分析等を用いて解説している。システム設計、プログラム開発では、オブジェクト指向技術によるモデル化を支援する手法としてUMLの代表的なダイアグラムを用いて解説し、SQLによるデータベースの利用、ユーザインタフェースの設計を行う。また、システム開発全体のプロジェクトのマネジメントについても記述している。1. 企業環境の変化と情報システム1.1 経営環境の変化と企業経営1.2 経営戦略と情報システム1.3 経営システムと情報システム1.4 情報システム1.5 求められる人材像と役割2. 情報システムのライフサイクル2.1 情報システムライフサイクルの全体像2.2 情報システム開発プロセスの概要2.3 開発プロセスの各工程3. 情報システム開発プロセスの演習課題ーー仮想的プロジェクト3.1 仮想的プロジェクトを通じた開発プロセス体験3.2 SDEV社の会社概要3.3 演習1:WEBパソコン販売サイトの研究ーー経営環境分析4. 情報システムの要求分析4.1 ビジネスシステムの要求分析4.2 演習2:SDEV社の要求分析4.3 演習3:新システムの要件整理5. 情報システムの設計5.1 情報システム設計のパラダイム5.2 ソフトウェアの設計5.3 演習4:オブジェクトの抽出と相互作用図の作成5.5 演習5:ステートマシン図の作成6. データベース設計6.1 データベースの特徴6.2 データモデル6.3 データベースの正規化6.4 クラス設計6.5 演習6:概念データモデルとしてのクラス図と多重度6.6 演習7:SQLの作成と実行7. ユーザインタフェースの設計7.1 ユーザビリティとアクセシビリティ7.2 対話設計における八つの黄金率7.3 演習8:ユーザビリティの研究8. プログラム開発とテスト8.1 情報システムの基本的なアーキテクチャ8.2 情報システムの品質8.3 テストと評価8.4 演習9:SDEV社のWEBサイト解析18.5 演習10:SDEV社のWEBサイト解析28.6 演習11:SDEV社のWEBサイト改造9. 情報システム開発のマネジメント9.1 情報システム開発プロジェクトのマネジメントーー低い成功率9.2 情報システム開発プロジェクトの失敗を防ぐには9.3 ユーザ側に役立つマネジメント技法9.4 演習12:EVMによる進捗管理10.参考文献11.付録1 演習用プログラムのダウンロード12.付録2 演習の解答例