イザベル・ファウスト「SOLO」驚異的なまでの集中、やわらかにして鬼気迫るファウストの音楽世界最高峰のヴァイオリン奏者、イザベル・ファウスト。深遠極まりない、無伴奏による新譜の登場。奏でている音色はやわらかく、フレーズのひとつひとつにふくよかな息遣いの音楽が宿っていながら、驚異的な集中にはただならぬオーラと鬼気迫るものすら感じさせるような演奏。ファウストの音楽だけでなく、彼女が音楽に向かう姿勢までもが鮮烈にとらえられているかのうような、圧倒的な録音です。 プログラムはバロック後期の無伴奏ヴァイオリン作品。冒頭のニコラ・マッテイス(息子)[after 1670-1737]の作品は3分半ほどの作品。ファウストの演奏は静かに始まりますが、次第にこの楽曲のもつバッハのシャコンヌのような鬼気迫る凝縮された世界に、聴き手は金縛りにあったように引き込まれてしまいます。 ニコラ・マッテイス(父)[fl.c.1650-after 1713]は当時コレッリのソナタを非常に優雅に演奏したという記録が残されており、卓越した技術と音楽性を兼ね備えていた奏者だったことがうかがわれます(ハプスブルク家の宮廷に仕え、残されている作品はヴァイオリン作品よりむしろバレエ音楽が多数)。 ヨーハン・ゲオルク・ピゼンデル[1687-1755]はドレスデン宮廷楽団に仕えたドイツの最高のヴァイオリン奏者でした。イタリアを訪れ、ヴィヴァルディに師事し親交を深めたことでも名を残しています。彼のソナタはバッハにも影響を与えたと考えられています。 ルイ=ガブリエル・ギユマン[1705-1770]はルイ15世やポンパドゥール夫人に仕えたヴァイオリン奏者・作曲家で、当時知名度・俸給の高さで群を抜いた存在でした。しかし浪費癖があり晩年は借金に苦しみ飲酒も過ぎるようになるなど、波乱の人生を送ったといわれています。舞曲風の楽曲が連なるこの作品18は美しい装飾的な旋律が魅力です。 ヨハン・ヨーゼフ・ヴィルスマイヤー[1663-1722]はザルツブルク生まれで、ビーバーが率いる楽団の奏者でした。この作品は彼の唯一の出版譜に含まれるもので、楽譜の表紙には通奏低音を伴う作品を意図していた形跡もありますが、現在はソロ・パートのみが現存。ビーバーのスコルダトゥーラの技法も取り入れた作品となっています。 ディスクの最後に収められているハインリヒ・イグナツ・フォン・ビーバー[1644-1704]のパッサカリアは、無伴奏ヴァイオリン作品の最高峰のひとつ。ファウストの音楽は、たしかな歩みで音楽を運びつつ、音の余白にまで、研ぎ澄まされた神経が行き届いていることが感じられるもの。なにかに突き動かされているように激しさを増す装飾は美しさを一切失わず、その音の連なりが織りなす空気は、人智を超えた神秘の領域を感じさせます。(輸入元情報)【収録情報】● マッテイス Jr:ファンタジア イ短調『Alia Fantasia』〜ソロ・ヴァイオリンのための2つのファンタジアより● マッテイス Sr:ヴァイオリンのためのエア集より プレリュード パッサッジョ・ロット - アンダメント・ヴェローチェ ファンタジア● ピゼンデル:ソナタ イ短調 I. プレリュード - II. アレグロ - III. ジーガ - IV. 変奏● ギユマン:ソロ・ヴァイオリンのためのアミュズモン Op.18より アレグロ アレグレット アンダンティーノ アレグロ - マエストーゾ アリア - グラティオーゾ ヴァリアツィオーネ アルトロ アルトロ● ヴィルスマイアー:パルティータ第5番ト短調● ビーバー:パッサカリア ト短調『守護天使』〜『ロザリオのソナタ』より イザベル・ファウスト(ヴァイオリン/ヤコブス・シュタイナー 1658) 録音時期:2020年4月 録音場所:ベルリン、テルデックス・スタジオ 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)Powered by HMV