驚愕! シャブリエの『スペイン』がロト&レ・シエクルだとこんな響きに。「目から鱗」連続の大注目新譜『春の祭典』と『ペトルーシュカ』の時代楽器による録音でレコード・アカデミー賞大賞を受賞し、一世を風靡した奇才指揮者フランソワ=グザヴィエ・ロト。期待の新譜はフランスの作曲家の目を通したスペイン。両国はピレネー山脈を挟んで隣同士ながら、音楽の印象はかなり違います。 このテーマの代表作がシャブリエの狂詩曲『スペイン』。1883年にパリで初演され、ポピュラー名曲となりましたが、マーラーは「近代音楽の始まり」と位置づけ、その先進性を高く評価したといわれます。時代楽器演奏による初録音に興味津々ですが、これが予想外の新鮮さ。原色的なオーケストラの響きとボルテージの高さが先入観となっていましたが、ロトとレ・シエクルの演奏は繊細で純フランス風。ラヴェルを思わす近代的な音響に驚かされます。ことにハープの効果と音色が絶妙で聴き惚れます。親しみやすい内容に反して、リズムとアンサンブルが難しい作品ですが、ロトの統率力で精密の極み。 マスネ作品が時代楽器で登場するのも初めてで大歓迎。当時の楽器、とりわけ木管の音色がマスネの柔らかな色彩にぴったりで、パステルカラーの世界が広がります。 さらに驚きなのが、ラヴェルの『道化師の朝の歌』。これは凄い。ラヴェルこそロト&レ・シエクルに一番合う作曲家と実感できる相性の良さ。各楽器の響きがこれ以上ないほど均等なうえ、透明で典雅な音色の美しさと人工美は目から鱗の落ちる思い。今後ラヴェルの大作に挑戦すること間違いないであろうロト&レ・シエクルの意欲が感じられます。演奏後、観客の「ブラボー」の声が納得できます。 今回もブックレットに弦楽器以外すべての使用楽器が明記されていて、貴重な資料となっています。ロトの演奏は相変わらず才気煥発。歴史的な意義はもちろんながら、切れの良いリズム感、推進力などスペインらしい魅力を味わせてくれます。(キングインターナショナル)【収録情報】『フランスースペイン』● シャブリエ:狂詩曲『スペイン』● マスネ:歌劇『ル・シッド』〜バレエ組曲● ラヴェル:道化師の朝の歌● ドビュッシー:管弦楽のための『映像』〜イベリア レ・シエクル フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮) 録音時期:2012年8月24日(ラ・シューズ・デュー音楽祭)、2013年2月9日(パリ、サル・プレイエル)、2014年3月28日(ペルピニャン、ラルシペル) 録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)Powered by HMV