自筆譜版をもとに『フーガの技法』を完成された作品として演奏!数の象徴がもたらす神秘的な美しさ、名手たちの至高のアンサンブルバッハの『フーガの技法』は対位法芸術の最高峰であり、バッハ書法の究極とも言うべき作品です。しかし演奏にあたっては、鍵盤楽器で弾けるように書かれていながら楽器指定がなく、また曲順をどうするか、未完フーガを含めるか否かという問題がつきまとう謎に満ちた作品でもあります。楽譜は出版譜の他にいわゆる「ベルリン自筆譜」(Mus. ms. Bach P 200)が残されていて、曲数や曲順、譜面の各所に違いがあります。このアルバムでは自筆譜を採用し「完成した作品」として演奏することが試みられています。 自筆譜の曲順と曲種を読み解くと、バッハがそこに「数の象徴」を盛り込んでいたことが分かりました。「BACH」をアルファベット順に数字に変換すると「2-1-3-8」となり、バッハはその合計数14を象徴的に作品に潜り込ませていたことが知られています。自筆譜の『フーガの技法』は基本となるフーガがまず2曲、次に半終止(ラ、Aの音!)で終わるフーガが1曲、そして反行形や対主題を伴うフーガが3曲、最後に複雑さを極めていく8曲というように構成されています。8曲のセクションは「2-1-2-1-2」と細分化でき、拡大・縮小を伴うフーガ、カノン、多重フーガ、カノン、鏡像フーガ(正立+倒立で1曲とする)と書法が発展していきます。 バッハは曲集のタイトルを「Die Kunst der Fuga」としました。フーガの綴りだけイタリア語になっています。これは上記の方法で数字に直したとき「158」になり、「Johann Sebastian Bach」もまた「158」になる、という数遊び。1+5+8=14(BACH)、というのもバッハは気に入っていたようです。 このアルバムではアンサンブルでの演奏が採用されています。スコアの音域に即した楽器が選択され、各種ヴィオールが美しく響き、机上の空論的な楽曲と思われがちな『フーガの技法』から驚くほど音楽的な対話が生まれています。オルガンは通奏低音として入ったり時にソロで弾いたりとアレンジも面白く考え抜かれていて、最後に未完フーガを添えているのも嬉しいところです。アッカデミア・ストゥルメンターレ・イタリアーナはこれまで「Stradivarius」や「DIVOX」に録音があり、今作が「Challenge Classics」での初作品。リーダーのアルベルト・ラージはサヴァールに学んだヴィオール奏者です。(輸入元情報)【収録情報】J.S.バッハ:フーガの技法 BWV.1080(ベルリン自筆譜版)1. コントラプンクトゥスI(基本形による単純フーガ)2. コントラプンクトゥスIII(反行形による単純フーガ)3. コントラプンクトゥスII(基本形による単純フーガ)4. コントラプンクトゥスV(反行形を伴うフーガ)5. コントラプンクトゥスIX(12度対位法による対主題と基本形によるフーガ)6. コントラプンクトゥスX(10度対位法による2つの対主題と反行形によるフーガ)7. コントラプンクトゥスVI(反行、縮小を伴うフランス様式によるフーガ)8. コントラプンクトゥスVII(反行、拡大と縮小を伴うフーガ)9. 8度のカノン10. コントラプンクトゥスVIII(3声の3つの主題によるフーガ)11. コントラプンクトゥスXI(4声の4つの主題によるフーガ)12. 反行と拡大によるカノン13. コントラプンクトゥスXIIa(4声の鏡像フーガ・正立)14. コントラプンクトゥスXIIb(4声の鏡像フーガ・倒立)15. コントラプンクトゥスXIIIb(3声の反行形を伴う鏡像フーガ・正立)16. コントラプンクトゥスXIIIa(3声の反行形を伴う鏡像フーガ・倒立)17. 3つの主題によるフーガ(未完) アッカデミア・ストゥルメンターレ・イタリアーナ ロゼッラ・クローチェ(ヴァイオリン) アルベルト・ラージ(指揮、トレブル・ヴィオール) クラウディア・パセット(テノール・ヴィオール) パオロ・ビオルディ(バス・ヴィオール) ミケーレ・ツェオーリ(ヴィオローネ) ルカ・ギエルミ(オルガン) 録音時期:2019年9月10-13日 録音場所:イタリア、ヴェローナ、ナザレス教会 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)Powered by HMV