ランダムウォークは,一見不規則ではあるが,次の位置が確率的に,なおかつランダムに決定される運動である。その理論は今やよく知られており,また物理学,化学,経済学,生物学を始め,多くの分野において有益なアプローチを与えている。 本書は,ブラウン運動を拡張した異常拡散の理論の発展に古くから貢献してきた著名な研究者であり,異常拡散についての一般向けの解説記事も執筆しているKlafterとSokolovによる著書の邦訳である。ランダムウォークを用いた自然現象の解析を念頭に置き,確率論の基礎から丁寧に解説し,異常拡散を示す確率モデルの理論を,連続時間ランダムウォークのエイジングやエルゴード性の破れといった最近の結果までを網羅しながら解説している。[原著名:First Steps in Random Walks: From Tools to Applications]