本書は出発点にかえって経営学を見直し、そこから何かをそれぞれの執筆者たちが得ようとして、まとめられたものである。第1部では、企業理論の基礎として、経済学的企業理論からなぜ経営学的企業理論が生まれたのか、そして経営学的企業理論の土台となるものが何かを明らかにしながら、個別経済主体としての企業がいかに変貌を遂げ、やがて株式会社制度を核とする展開へと移っていく、という基本的部分の考察が行われる。第2部にあっては、前記の株式会社企業をめぐる多くの問題が、コーポレイト・ガバナンス論争をはじめ、競争力強化を目指す企業間の熾烈な闘い、そして大規模化を続ける企業における所有(出資)と経営の分離、アメリカ企業の特徴と日本企業にみられる企業集団の支配とそこにまつわる問題が、検討される。第3部においては、前述の第1部、第2部の内容を踏まえた上で、現代の企業理論がいだいている問題に、アプローチされる(研究の方向が向けられる)。現代企業における戦略的経営、ならびに真の企業の社会的貢献が問われる。そして企業に対して一段と力を増してきているわが国の利害者集団に関わる課題が探究され、企業をめぐる環境問題、企業主体の意思決定、動機づけと企業行動の基本的課題が論じられる。