それは「紙ピアノ」から始まった──キャリア最初期から円熟期までの作品を検証。技法と美学が描く螺旋形を読み解き、「世界」とのかかわりのなかにその創作のエッセンスをみる。日本の20世紀音楽を代表する作曲家・武満徹(1930–1996)。日本の伝統楽器を大きくフィーチャーした《ノヴェンバー・ステップス》で広く知られる不世出の作曲家は、“もっとも西洋的な楽器”であるピアノを愛し、キャリアの初期から晩年まで、この楽器のために作曲した。楽譜を緻密に分析するだけでなく、名文家として知られる武満のテクストを精緻に読解することにより、その技法と美学が織りなす螺旋形を、戦後日本固有のコンテクストのなかに描きだす。